古今東西、それぞれ儀礼、礼法があり、人間としての社会に最も必要なものが礼儀であります。
「父ちゃん」「母ちゃん」「おっぱい」という言葉を誰もが一番最初に覚えると思います。
これは命をつなぐために最も必要な言葉。
日本人は次に「おはよう」「ありがとうございます」を覚えます。
これは「お日様」「日輪様」つまり太陽に畏敬の念を示し、奇跡的な有難き存在に感謝をする。
これを身体を使った様式で表現するのが礼法なのである。
頭を下げるという運動と拝むという動作を日本人は自然に覚えていく霊的な様式美を身体に記憶します。
この礼法は日本の古武術には切っても切れない強い関係を持つ人との間合い、目付、身体操作の基本が満載されているのである。
この礼法の理を知ると剣術の奥義の要諦を体得する事ができるといって過言ではないのです。
今回は立礼という礼儀作法。
礼儀作法は、およそ「道」とつく日本の伝統表芸は共通している。
流派により多少の違いはありますが、源流は同じです。
日常に使う礼法にある剣術
神社における立礼の作法は数多ありますが、日常に使う礼法をご紹介いたします。
- 小揖(ショウユウ)【15度の礼】
- 浅い磬折(ケイセツ)【45度の礼】
- 深い磬折(ケイセツ)【70度の礼】
を紹介いたします。
小揖(ショウユウ)【15度の礼】
これは真っ直ぐ正立した形で少し腰を入れ躬(上体)を傾け15度ほど頭を傾ける礼です。
この礼の動作における頭の傾きと腰をいれた姿勢は敵に対峙する距離感(間合い)は今でいうゼロレンジコンバット(接近戦)の間合いです。
自分の手を拳の形にしてへその上に置くとだいたい拳2つ分の幅となります。
この間合はつまり発勁的な瞬発、頭突き攻撃、小さい幅での体の開きによる力の流し、瞬発力の効いた後退、刀であれば柄による攻撃等色々な動きを無意識に動かせるように礼の姿勢と感覚を覚えさせる事が大事なのであります。
浅い磬折(ケイセツ)【45度の礼】
これはお祓いなどしてもらうときの礼なのですが、玉串奉納や祝詞奏上の時または神職の方にご挨拶するときの礼です。
この礼では上半身で45度のトルク回転軸ができるので、入身・転回・円転の理や螺旋運動ができるように意識して鍛錬します。
深い磬折(ケイセツ)【70度の礼】
これは神様に対して行う最敬礼の礼です。
90度という人もいますが、実際はこの間なのだそうです。
この角度はかなり不利な姿勢なので如何に刀を抜くか、如何に上半身と腰の回転を利かして、如何に回避運動、抜刀をし次の攻撃に転じるかを意識しながらこの姿勢の礼を体現していきます。
剣の修行者はこれらの事を意識しながら礼を怠る事開く鍛錬しています。
礼法一つが己を守り邪を払う形となるのです。
日本人の礼慣習の素晴らしさが改めて理解できますね。
参考文献
神道教師講習会講義録. 巻之1-3
祭式作法
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/815366